賀川豊彦献身100年記念神戸プロジェクト

賀川豊彦  献身100年 プロジェクト委員会 

 賀川豊彦が神戸での活動を開始して、2009年に100年を迎えます。これを機に、私たちは「賀川豊彦献身100年記念事業」を展開します。

 1909年12月24日、21歳の賀川豊彦は貧困にあえぐ人々のために献身しようと、当時、劣悪な環境で生きることを強いられた人々が生活する地域に入っていきました。賀川豊彦は当時死の病と恐れられていた肺病を病み、余命幾ばくもないと宣告された身体でしたが、貧困と差別のただなかにあって困難を抱えた人々と共に暮らし、徹底してこれらの人々のために働いたのです。

 その1909年から1923年までの14年にわたる神戸での活動は、福祉の向上を目指してキリスト教伝道にはじまり、労働運動、協同組合運動(生活、農業、漁業、林業、医療、共済)、平和運動、無産政党活動に発展しました。

 その活動は、神戸に留まらず、関東大震災の救援を契機に日本全国に広がり、福祉、教育、医療、生産、労働、協同組合、平和、人権、共生という、私たちの暮らしを支える根幹を築くことに、その生涯を捧げました。

 これらの活動は諸事業の萌芽となり、それぞれのスペシャリストによって専門分化され、今なお、社会の下支えを担っています。しかし、現代社会の課題は、深刻で複雑です。それらの課題は、個々の専門的なアプローチだけでは難しく、全体像を把握し、対症療法ではない課題解決を可能にするためには、各専門分野が互いに協働することが必要ではないでしょうか。

 100年前の賀川豊彦の活動は、目の前に迫る困難に向って、福祉、教育、医療、生産、労働、協同組合、平和、人権、共生といった多様な取り組みを、渾然一体のものとして展開させています。それぞれの取り組みが互いに協働することが、最大の効力を発揮したからです。

 私たちは、賀川豊彦の多様な取り組みに出合い、100年を遡って検証し、また新たな100年を見通し、互いの分野や垣根を越えた、現代にふさわしい形を模索することで、多くの課題を解決し、共に生きる社会を実現することを目指します。

2007年4月28日
         賀川豊彦献身100年記念事業プロジェクト委員        
岩村義雄 Pastor Yoshio Iwamura
記念碑
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
記念碑a
 
プロジェクト名刺

 賀川豊彦の生い立ち 鳥飼慶陽

 賀川記念館をご覧ください。

KBHニューズレターNo.6 20040316
拙稿 KBH「ニューズレター」 (No.6 2004年3月16日付) 第一面
神戸で初めて聖書を印刷した会社 ―福音印刷合資會社― 拙稿 Pastor Yoshio Iwamura
元町1丁目にあった福音印刷合資會社内部 1906年 芝はるは働く。Ⓒ岩村義雄
賀川豊彦&芝はる 結婚
1913年5月27日 Ⓒ岩村義雄
賀川記念館贈呈
Iwamura’s Libraryの 福音印刷合資會社の発刊の稀覯書を 賀川記念館に贈呈。「読売新聞」(2011年11月24日付)。Pastor Yoshio Iwamura
『読売新聞』(2011年12月24日付)。

賀川豊彦再発見 2011年11月30日 岩村義雄

 2009年12月22日,神戸で,賀川豊彦救貧活動開始100年を記念する集いに1600人が集まった。賀川は神戸市で生まれた。1909[明治42]年12月,21歳の時,日本最大のスラム街である神戸市新川に入った。

 大宅壮一氏に「およそ運動と名のつくものの大部分は賀川豊彦に源を発している」と言わせるほどである。平和運動,社会事業,労働組合運動,農協活動,コープ組合など,数え上げればきりがない。

 ノーベル平和賞,ノーベル文学賞の候補者にも挙げられた。海外では,20世紀の三大哲人として,シュバイツアー博士,ガンジーに並んで評価されている。

 日本では忘れられた存在になっているが,原因はキリスト教会の評価が厳しいからであろう。300余の書籍を書いたが,その中に被差別部落の人々に対する差別表現が含まれているからである。しかし,かつてマルティン・ルターがユダヤ人差別をしているからと言って,ルターの果たした業績を否定する人はまずいないだろう。時代的背景を考慮すれば,賀川の思想は,今日の部落解放運動の原点にあるわけだから「木を見て森を見ない」式の批判は的外れだろう。

 賀川豊彦の書物は1世紀を経ても,決して色あせていない。

 「地球は人類を産んだことを悲しんでいる。地面を荒らしたのは人間である。ああ,私はそれを呪う。私がもし神であれば,地球の心(しん)にダイナマイトを仕掛けて木っ端みじんに打ち砕いているかもしれない。それほど私は人類に愛想をつかしている。それでも私の神はまだ愛想もつかさず,愛のために私ら人類をゆるし,支え,亡ぼさないでいてくれる…。」(『地球を墳墓として』賀川豊彦著 1924年)。

 賀川の妻ハル[1883-1982]は,豊彦に出合った時,神戸市元町1丁目24番地の福音印刷合資會社[1904-1913]で聖書を印刷する仕事をしていた。豊彦は印刷会社を訪れた集会で「私は新川に住む乞食の親分です」と自己紹介をした。上手に讃美歌を指導したりもした。二人は,信仰を分かち合う仲になり,1913年結婚。

 ハルが携わって発刊していた聖書を2011年12月2日に読売新聞社の古市記者の仲介で賀川記念館献に献品する運びになった。蔵書は1975年以降,収集していた一部であり,神戸バイブル・ハウスにも寄贈してきた。

 賀川記念館への来館者は,賀川夫婦が説いた永遠のベストセラーが混迷の世界に一条の光明を照らしてきた痕跡に思いを馳せることができればさいわいである。

                              寄贈者 岩村義雄

  寄贈リスト

 ①    『引照付新約全書』(大英國・北英國聖書會社發行 神戸市京町24番地[現市立博物館] 福音印刷合資會社 16㎝ 1904年発行)。

②    『新約全書』(大英國・北英國聖書會社發行 神戸市前町14番地[現市立博物館] 福音印刷合資會社 12.8㎝1905年発行)。

③    『箴言』旧約聖書分冊(大英國・北英國聖書會社發行 神戸市江戸町95番地[市役所北西] 福音印刷合資會社 15.1㎝ 1907年発行)。

④    『新約全書』(大英國・北英國聖書會社發行 神戸市江戸町95番地 福音印刷合資會社 12.6㎝ 1907年発行)。

⑤    『引照 舊新約全書』(大英國・北英國聖書會社發行 神戸市江戸町95番地 福音印刷合資會社 18.8㎝ 1909年発行)。

⑥    『新約聖書改譯馬可傳』(英國聖書會社發行 神戸市江戸町95番地 福音印刷合資會社 18.5㎝ 1911年発行)。

⑦    『和英對照新約全書』(大英國・北英國聖書會社發行 神戸市江戸町95番地 福音印刷合資會社 18.8㎝ 1909年発行)。

⑧    『舊約聖書詩編全』(大英國・北英國聖書會社發行 神戸市江戸町95番地 福音印刷合資會社 15㎝ 1913年発行)。

⑨    『改譯マルコ傳福音書』(英國聖書會社發行 神戸市江戸町95番地 中外印刷株式会社[吾妻通3丁17番地 現賀川記念館近く]印刷所 14.6㎝ 1918年発行)。

⑩    『改譯ルカ傳福音書』(英國聖書協會發行 神戸市江戸町95番地 中外印刷株式会社印刷所 14.8㎝ 1918年発行)。

⑪    『新約聖書』(大英國・北英國聖書會社發行 神戸市江戸町95番地 福音印刷合資會社(神奈川縣横浜市山下町104番地 12.8㎝ 1919年発行)。

⑫    『マタイ傳福音書』(英國聖書協會發行 神戸市江戸町95番地 中外印刷株式会社印刷所[吾妻通3丁17番地]印刷所14.8㎝ 1925年発行)。

⑬    『創世記』(英國聖書協會發行 神戸市江戸町95番地 中外印刷株式会社印刷所[吾妻通3丁17番地]印刷所14.8㎝ 1925年発行)。

⑭    『英和對照ルカ傳福音書』(英國聖書協會發行 神戸市江戸町95番地 中外印刷株式会社印刷所[吾妻通3丁17番地]印刷所14.8㎝ 1930年発行)。

⑮    『ヨハネ傳』(英國聖書協會發行 神戸市江戸町95番地 中外印刷株式会社印刷所[吾妻通3丁17番地]印刷所10.5㎝ 1931年発行)。

⑯    『マルコ傳福音書』(英國聖書協會發行 神戸市江戸町95番地 中外印刷株式会社印刷所[吾妻通3丁17番地]印刷所14.8㎝ 1931年発行)。

⑰    『新約全書』(英國聖書協會發行 神戸市江戸町95番地 中外印刷株式会社印刷所[吾妻通3丁17番地]印刷所12.7㎝ 1931年発行)。

⑱    『新約聖書』(日本聖書協會發行 神戸市加納町4丁目5番地  大熊整美堂印刷所[東京市京橋區銀座4丁目2番地] 18.2㎝ 1943年発行)。

                        

 

                                        
                                   以上